BCAAはイソロイシン・ロイシン・バリンの3種類のアミノ酸で、筋肉量増加やアルブミン合成を促進させる作用を持ちます。
ボディビルダーのような過剰に筋肉をつける目的では、高タンパク食をベースにプロテインやホエーを追加するより、BCAA(特にロイシン高配合)を追加する方がより筋肉を増加させる事が判明しています。
この作用は高齢や重症疾患によるサルコペニア(筋肉減少症)の改善にも使用され、QOLの向上に役立てられ始めています。
分岐鎖アミノ酸 ロイシン の特別な作用について
ロイシンはタンパク質合成のシグナル分子として知られており、筋肉合成開始の指令を出すなどの作用を発揮します。
様々な要因から起こる筋肉減少症、低アルブミン血症などに有用となります。
また、非常に弱いながらも血糖降下作用もあります。
分岐鎖アミノ酸 イソロイシン の特別な作用について
イソロイシンは糖尿病患者に有用である事がわかってきました。
イソロイシンは糖代謝に強く関わっており、糖代謝を制御するシグナル分子として作用します。
イソロイシンの血糖値上昇抑制作用は、筋肉へのブドウ糖の取り込みを刺激し、全身の細胞にブドウ糖の利用を促進させ、肝臓における糖新生を抑制(肝臓でブドウ糖を作らせない)することで血糖値を低下させる作用があることが判明しました。(2014年発表)
(2)アミノ酸を栄養補給目的で使用
栄養補給目的の場合、ヒトでは WHO の数値が、犬・猫では AAFCO の数値がしばしば引用されます。
これらはヒト・犬・猫の理想的な数値を示しているのでしょうか?
これらはタンパク質・アミノ酸摂取量のミニマムを示しています、この量ではかなり少ないと考えてください。
食料事情の悪かった昭和中頃の調査で、日本人のタンパク質、アミノ酸平均摂取量が昭和34年に報告され、2007年改訂 WHO が示すアミノ酸の2~3倍もしくはそれ以上が摂取されていました。
いかに WHO の数値が低いかが知れます。
次に示す表はアミノ酸の1日の摂取量についてを示しています。
2列目:WHO の示す体重1kg当たりの1日摂取量。
3列目:体重60kgに換算した1日摂取量。
4列目:昭和34年に報告された当時の日本人の1日平均摂取量。
5列目:昭和34年に報告された岩手県の漁村142名の1日平均摂取量。
6列目:昭和39年の1年間に女子大の寮生45名が食事やおやつなど摂食した全ての食物を記録したデータからの1日平均摂取量。
尚、WHOの示すタンパク質摂取量は 0.66 g / kg・体重 / 日で、体重60kgに換算すると、1日 39.6 g になりますが、漁村の平均タンパク質摂取量は89.1gであったと報告しています。
WHO の示すタンパク質必要量について、一般社団法人 日本腎臓学会の情報で以下のように説明されています。
WHO の示す平均タンパク質必要量の 0.66 g / kg・体重 / 日は、この量では半数がタンパク質不足に陥る量という意味である。
成人の 97.5 % がタンパク質不足とならない摂取量は 0.83 g / kg・体重 / 日 である。
(医学・薬学・獣医学等では50%致死量の LD 50 などのように、半数に問題が起こる数値を基準としてよく使います)
(3)同じアミノ酸が、特殊な作用を示すのと、その作用を示さず栄養素となる事、どう違うのか
ひとつひとつのアミノ酸が持つ特別な作用は、短時間にそのアミノ酸の血中濃度が上昇する必要があります。
例えばイソロイシンの血糖値を下げる作用などです。
肉や豆腐にもイソロイシンは豊富に含まれていますが、食後ゆっくりと消化吸収されるために、血糖値を下げる作用を発揮させる程の血中濃度には至らず、イソロイシンの通常の使命である栄養素になるのです。
この事は、薬品やお酒をイメージして頂ければ理解しやすいです。
ここでは飲酒でイメージをしてみましょう。
アミノ酸の血中濃度がアルコールの血中濃度、アミノ酸の特殊な作用がほろ酔いということになるでしょうか。
ビールをジョッキに2杯(1000ml とします)ほど飲むとほろ酔い気分となる人に、この量を48等分し30分毎に飲む事を24時間続けたとしても、ほろ酔い気分にはひと時もならないでしょう。
具体的には、1000ml の48等分はおよそ20.8ml で、これは大さじ1杯半に満たない量です。
30分に1回大さじ1杯半弱のビールを飲むことを1日続けけたとしても、ほろ酔い気分にはならないでしょう。
このように消化吸収に時間がかかると、血中濃度がしっかりと上昇せず、機能性食品として働くことなく栄養素になります。
カゼインなどのプロテインは消化吸収に6~8時間程度かかります。
ホエイは消化吸収しやすく好まれていますが、これもタンパク質であり消化吸収には数時間かかります。
アミノ酸は消化が不要で吸収されるだけですので、血中濃度を急速に上昇させる事が出来ます。
以下の論文より15~30分以内で血中濃度が上昇し、そのアミノ酸特有の作用を発揮させる事になります。
アミノ酸吸収の速やかさがわかる論文より
人と犬におけるロイシン投与試験(投与後のアミノ酸血中濃度と血糖値の変動を調査した実験)
人・・・ロイシン投与後30分毎の血中アミノ酸濃度をチェック
投与量は150、300、750mg/kg
全投与量全員で30分後には血中アミノ酸濃度が上昇した
犬・・・ロイシン投与後15分毎の血中アミノ酸濃度をチェック
投与量は150,300,400,600,750mg/kgの群
2頭を除き15分後には血中アミノ酸濃度が上昇した
(1頭は30分後、1頭は45分後に上昇)
(コントロール群に比べ人、犬で血糖値の軽度の低下も報告されています。)